ドクターカー出動の実際②忘れられない出動

ドクターカー出動の実際②忘れられない出動

こんにちはCAMPGEARTOKYOです。

普段は救命救急センターで看護師をしながら、キャンプ情報をアップしたり

看護師とそのお仕事の内容をアップしたりしています。

ドクターカーについて以前記事に書かせていただいたので

今回はその出動の実際で忘れられない出動を一つ紹介したいと思います。

その前にドクターカーの仕組みや内容がわからないって方は

以前のブログを参考にしていただけたら幸いです。

過去ブログ👉ドクターカー出動の実際①ドクターカーの概要と適応

当センターのドクターカーの仕組み

実は救急医療には医療圏というものが存在します。

救急車の医療的な検証のためにメディカルコントロールというものが存在しています。

救命救急センターをもつ病院や大学病院が地域の医療範囲を定めており、救急搬送の運用が適正に行えているのか、また困りごとがないかを検証しています。

当センターでのドクターカー出動の基準

当センターの医療圏で起こった、救急事案に関しては

消防機関と連携しており

乳幼児の心肺停止

高所からの墜落

などのいくつかのキーワードを定めて、事案が起こって、通報者が通報した時から

救急車の指令本部から直接病院へドクターカーの出動依頼がある場合に出動基準となります。

当センターでの局地災害が起こった場合(大型バスの横転やビルの倒壊などが含まれます)

現場救急隊からの要請のこともあります。

なので大まかに分けると以下の三つです。

  • キーワードによる司令本部からの出動要請(覚知要請)
  • 局地災害による出動要請
  • 現場救急隊からの出動要請

忘れられない出動

現場到着まで

私は多くのドクターカー出動を経験していますが、中でも忘れられないのが初めての出動です。

看護師三年目の私は、まだ見習い中のため、先輩Aさんとともにドクターカーに乗り現場に行きました。

ドクターカー要請内容は

「交差点の事故で4人以上の傷病者がいます。他は詳細不明」とのことでした。

ドクターカーでの出動時には覚知要請となる事が多くあります。

出動メンバーは

医師一人と看護師二人(先輩Aと私)です。

医師「トリアージを行う可能性があるが、おそらくは救急隊が先に一次トリアージをしているだろうからするなら二次トリアージをしよう」

という事を共有したのと輸液ルートの作成を2本することを決めました。

現場に到着です。

現場到着

私はとても緊張していました。通勤帯の時間であったために多くの見物の人がいました。

現場につくと消防隊員が現状を教えてくれます。

消防隊員「交差点での車二台での衝突事故で、傷病者は4人います。
一人目は運転手さんA、運転手さんは軽傷で自己にて歩行もできます。救急車へ搬入しています。
二人目は歩行者のBさん、この方は車と車がぶつかった後の車とぶつかりましたが幸い軽傷で歩行も可能で救急車内で搬送先を決定しています。
三人目はもう一台の車の運転手さんCです。この方の運転する車が赤信号の交差点に進入し、Aさんの運転する車と衝突したそうです。Cさんは頭部から出血がありますが出血のコントロールは行えていますが、まだ事故車内に閉じ込めれています。一時意識消失があったとの情報があります。
最後の一人はCさんの奥さんでDさんです。DさんはCさんの運転する車の後部座席に乗車されていました。意識障害はない状態ですが現在も事故車内に閉じ込められています。」

と説明があり。

医師「歩行可能な患者さんの二人は搬送先を当たってもらいましょう。車内に閉じ込められた二人の患者さんの方が気になります。頭部から出血のあったCさんが意識障害があった可能性もあるみたいなんんで頭蓋内出血が心配ですね。いずれにしろ、救出された方から全身観察を行って搬送を決定しましょう。しかし、二人ともを当センターへ連れて帰るのは無理かもしれません。」

と情報の解釈を共有しました。

当センターでは院内で他の手術をしていたため、余力はあと一人の患者分ほどしかない状態でした。

最初に救出されてきたのはDさんでした。

先輩看護師Aさんに「私はここで、Cさんの容態変化に注意しておくから、あなたは先生(医師)とDさんの観察に行って」と指示されました。

緊張がまだとけない私は点滴と気道管理セットをもった状態でDさんが搬入された救急車へ駆け寄ります。

Dさんとの接触

Dさんは高齢の女性でした。救急車内でDさんの容態は

バイタルサインにはほとんど問題なし(心拍数、血圧、呼吸、体温などの生命兆候のことを医療業界ではバイタルサインと呼びます)心拍数が少し早い以外は問題ない様子です。

高齢の方で心拍数が早い方と出会うことはしばしばあります。

医師「大丈夫ですか?どこか痛みますか?」
Dさん「どこも痛くないですよ」とはっきりと答えている。

そのやりとりの様子を見て安心したのを覚えています。
心の中でDさんの状態は安定している。と思いました。

医師「とりあえず点滴路確保して、搬送先が決まるのを待ちましょう」

無事点滴路の確保を行っているうちに搬送先が決定したので搬送先に搬送していただくことになりました。

以前も説明しましたが、病院前救急活動では現場滞在時間を減らすことが重要です。

それからすぐにCさんが救出されたという情報があり、Cさんの搬入された救急車へ向かいました。

Cさんとの接触

Cさんは高齢の男性でした。
Cさんの容態は頭部からの出血はわずかにあり、首の痛みを訴えていましたがバイタルサインは安定していました。

Cさんにも点滴路を確保して当センターへ搬送しました。

Cさんは「奥さんはどうなりました?」と心配されていました。

結果的にはCさんには検査の結果、頭蓋内血種などの所見はなく、頚椎骨折の診断となりました。

ドクターカー帰還後

その後、緊張から解放され、ドクターカーの点検をしているときでした。

別の患者さんの搬送を終えた救急隊の方が話しかけてくれました。

救急隊「お疲れ様です。朝のドクターカーの出動、大変でしたね。でもおばあちゃん残念でしたね。」

私「え?残念ってどういうことですか?」

救急隊「ご存じないですか?Cさんの奥さんのDさん、搬送先で亡くなったんです」

私「え。なんで、どうしてですか?」

救急隊「骨盤骨折だったらしいですよ」

その後のやり取りをはっきりは覚えていません。

ショックだったということだけを覚えています。

現場では、Cさんは「どこも痛くない」と言っていたのに。心拍数が少し早かっただけだったのに。

という風な事を考えていました。

その後は自分は本当にベストを尽くしていただろうか?

高齢者の方の自覚症状が乏しいことがあることを理解して観察できただろうか

高齢者のバイタルサインの変化は本当に悪化してから悪くなることがあることを理解して観察や予測を行えていただろうか?

自分で全身観察を行えていただろうか

不安な状態にある、現場の患者さんに安心してもらえるような声かけができていただろうか

などたくさんの疑問が浮かび、耐えきれずしばらく落ち込んだのを覚えています。

もう、ドクターカーには乗れない。自分が乗ることでデメリットが生じている。

救命の世界もやめてしまおう。と何度か師長さんとも話ました。

先輩Aさんの言葉

ある勤務終わりに先輩Aさんと話をする機会があり

「あなたがそんな風に思う必要はないよ。ここでやめてしまったらDさんが悲しむと思う。あなたのその経験を伝えていくことが同じ思いの人を増やさないことに繋がるんじゃないかな?

医療って結局、結果論なところがあるんだよ。もし現場の判断でDさんを連れて帰ってきててもDさんが救えたかはわからないし、Cさんは意識消失のエピソードがあって、頭部からも出血をしていたことを考えると頭蓋内出血があったことを考えるのは間違ってはいないし、そのCさんがほかの病院で亡くなっていた可能性があるよね。だからこそ、責任をもってベストを尽くすことが必要なんだよ」

っと教えてくれました。

それからは私はこのエピソードを絶対に忘れることがないエピソードにしようと思っています。

病院前医療現場では

医療資機材や行えることに限界があります。

だからこそ、ベストを尽くすこと、行動に責任を持つことの重要さを知ったのです。

長くなりましたが、以上が忘れられないドクターカー出動のお話しでした。

最後に

ちなみにCさんには家族さんからDさんが亡くなった事を話していただき、入院中ではありましたが、お葬式、告別式に参加していただきました。
Cさんは自分の運転する車で奥様を亡くされた事を悲しんでおられました。

このブログのほかにも
看護師の情報として
発達障害をもつ新人看護師の指導シリーズ等があります。
以下のリンクからジャンプできます。

👇発達障害をもつ新人看護師の指導のブログのリンク👇

発達障害をもつ新人看護師の指導①発達障害をもつ看護師の現状

発達障害をもつ新人看護師の指導②問題行動の考え方

発達障害をもつ新人看護師の指導③問題行動の理解と対策

発達障害をもつ新人看護師の指導④組織的な関わり方

発達障害をもつ新人看護師の指導⑤発達障害に気づく、気づいてもらう

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