発達障害をもつ新人看護師の指導④組織的な関わり方

発達障害をもつ新人看護師の指導④組織的な関わり方

はじめに

少しづつみなさんにブログを見ていただくことが多くなっているようでうれしいです。

コメントもいただくこともあり、本当に励みになっています。

今回は発達障害をもつ新人看護師の指導の4回目となります。

ブログもリンク

発達障害について書いた他のブログの記事も参考にしてください。

発達障害をもつ新人看護師の指導①発達障害をもつ看護師の現状

発達障害をもつ新人看護師の指導②問題行動の考え方

発達障害をもつ新人看護師の指導③問題行動の理解と対策

発達障害をもつ新人看護師の指導⑤発達障害に気づく、気づいてもらう方法

今回の内容

今回は発達障害をもつ新人看護師さんへの「組織的」な関わり方です。

組織的な関わりを明確されている施設は少ないと思いますし

管理職にある方の悩みではないでしょうか?

参考になればいいな、と思います。

内容はいつもと同じですが

帝京平成大学ヒューマンケア学部看護学科教授北川 明さん
が書かれた
「発達障害のある看護職・看護学生支援の基本と実践」
を参考図書①に

救命救急センターで15年働き、毎年新人の指導を行って現在は管理職をしている
私が経験を通して感じたことや気を付けている事を含めて語っていきたいと思っています。

問題行動に関する組織での対策

まず、大前提として

発達障害をもつ個人を問題児として扱わない

事を意識しましょう。

問題なのは発達障害によって引き起こされる問題であって、

個人が問題なのではないということ

これを一緒に働くスタッフの間で認識する必要があります。

管理職を行っているとスタッフの教育って本当に大変ですし神経を使います。

しかし、管理職が発達障害の特性をもつ個人を問題視すると

部下であるスタッフもそうなります。

問題なのは問題であって個人ではないこと

発達障害を障害ではなく「特性」として受け止める

ことがよい風土を作ります。

良い風土を作るためにには

  • 管理職同士で「発達障害をもつ個人を問題視しない」という認識を共有します
    リーダーシップの権威、Jコッター(参考図書②)も提唱していますが
    同じ志をもつ同志を数人そろえるだけで組織は同じ方向へ進みます。
    同じ本を読む、意見を言語でかわす、何か連絡ノートのようなもので共有するでもいいと思います。
    とにかく管理者は一枚岩となって認識を共有したほうがいいでしょう。
  • ネガティブな発言で終わらせない
    スタッフが「あの子がいると本当に大変」「何考えてるのかわからない」って言うのを
    大きな声で言ってることがあります。
    確かに大変だったのでしょう…。管理者としては「どんなところが?」と聞き
    「こうしたらいいよ」とか「こんな気持ちだったんじゃない?」と伝えてみると
    愚痴だけでは終わらないですし、建設的な意見になると思います。
  • 上記のようなことを細かく繰り返し組織全体で見守る
    管理者だけではうまくはいかないこともありますので
    スタッフ全体で認識を共有し合うようにする必要があります。

このような雰囲気作りが基盤になります。

私の施設での取り組み

私の職場で管理者で同じマネージメントの本や教育の本を回し読みして
情報の共有をしています。
しかし、それぞれの価値観もあります。
同じ本を読んでも「同じ価値観である必要はない」ことも共有しています。
そして発達障害をもつスタッフも含めて一年目の新人看護師さんには
「看護って楽しい」「仕事って楽しい」って思ってもらえればゴール
としています。
実際に先日、たくさん指導されている発達障害をもつ新人看護師さんは
「ここで働けて本当に楽しいんです!」と嬉しそうに私に語ってくれました。
もちろん
そういった周りの苦労を知らずに楽観的な発言があることが発達障害の特性ではあり
余計に疲れたりすることもあります。

でも…よく考えてみてください。

仕事や看護が楽しいって思ってくれているんです。
きっと病院や新人看護師さんい明るい未来が待ってると思いませんか?
不機嫌で意地悪くて、患者さんに怒ったり冷たくしている看護師さんに比べたら
多少お仕事ができなくても
一生懸命なスタッフがいることって幸せじゃないですか?

話は長くなりましたが
実際は上記のような雰囲気作りをしながら
詳細な組織的な対策を練って挑戦し続けることが必要になります。

詳細な組織的な対策

基本的にはミスを避ける環境を作ります。

例えば赤ちゃんが机の上に置いたグラスを落として
グラスを割ったとします。
グラスを割った事で赤ちゃんを責めますか?

責めませんよね?
割れやすいグラスをそばに置いていた大人が悪いのです
むしろ、グラスでケガをしなかったのかを心配しますよね?

発達障害を赤ちゃんと同じと言っているのでありません!

だれもがミスをしないような環境作りがあれば、そもそもミスは起こりません。

では詳細を説明します。

メモをとらない事について

そもそもメモを取らなければいけない状態を見直します。

具体的にはマニュアルの整備です。

マニュアルに書いているからと説明できれば
・メモを取る必要もない
・言語で説明する手間も省ける
発達障害をもつ新人看護師さんは言語をイメージ化することが困難ですので
非常に効果的です。

マニュアル整備は大変ですが

発達障害をもつ新人さんに合わせてマニュアルを作成するわけですから

誰が見てもできるマニュアルを作るチャンスになります。
ということは質の担保につながります。

ワークシートを利用する

病院であれば受け持ち看護師さんはワークシートを使用しているのではないでしょうか?
ワークシートを指導者も一緒に確認するのです。
本人が書いたメモなどがワークシートにあれば
何を考えているのかわかりやすくなります。
組織的な関わりとして
ワークシートをチームで共有して
「今何をしているのか」をチームで把握することも良いでしょう。
・声をかけやすくなる
・途中でやるべきことを忘れたりすることを防げる

業務の習得をセグメント化

新人看護師さんは入職初期に先輩看護師の後についてシャドウイングといわれる

「付いて回る」ということをするのではないでしょうか?

発達障害の特性がある新人看護師さんには

業務と業務のつながりが理解しにくい状態にあります。

バイタルサイン→薬剤投与 という業務の流れは

一般的に自然ですが

発達障害があると、情報が混乱するために

シャドウイングではつながりを理解しにくい状態です。

ですから慣れるまでは

ひたすらバイタルサインの測定を繰り返して成功体験を作る

ひたすら薬剤投与を繰り返して薬剤投与の一連の流れをマスターする

などのセグメント化をすると混乱が生じにくくなります。

指導者や周りのスタッフも同じことを繰り返してしてもらうほうが安心して任せられます。

同じことも違うように感じる

発達障害のある方は

私たちが同じように感じていることでも違うように感じている

こともありますの注意しましょう。

例えば、ドレーンや挿入物の固定でも挿入箇所によって「初めてだ!」

と緊張したり、できなかったりすることがあります。

挨拶ができない

挨拶や返事ができない場合

その箇所だけ練習してもらうことも必要です。

ナースステーションに入ってきた瞬間から練習を何度もしてもらう

ことで少しづつよくなりますし

こちらから声かけをするとよくなる事もあります。

個人的に気を付けていること

発達障害のある新人看護師さんを担当していると

私でも神経をかなり使います。

本人のプレッシャーや負担にならないよう

業務の先回りをしたり、見守ったり、アドバイスをしたり

その中で、細かく話を聞くことを意識しています。

私にはわからない価値観の時もありますが

「そんな考え方があったんだね!素敵だね!」って思うことも少なくありません。

患者さんが「髪を洗ってほしい」って訴えたときには自分の業務が全く終わっていないのに

髪を洗おうとしたり。←でもこれって報告連絡相談の上で行えていたら

患者さんのニーズに速やかに対応する看護師として100点じゃないですか?

素敵だなって思う瞬間ってたくさんあります。

まとめ

  • 発達障害はハンデばかりではありません
  • 管理者が認識を共有する
  • 組織で発達障害をもつ方も困らないようにする
  • 業務を可視化したりセグメント化する
  • 「素敵だな」って思えることろを探す

これからも発達障害をもつ新人看護師さんの事も
もちろんですが看護のお仕事の事や
大好きなキャンプのことを発信していきたいと思います。

参考図書は以下です。
よろしければ購入してみてください!
またコメントなどを気軽にいただけると励みになります。
よろしくお願いします。

参考図書①

 

参考図書②

 

 

 

 

 

 

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